「解った、いいよ」

答えると僕は、言われた通り目を閉じた。


「…ほ、ほんとに閉じてる…!? 薄目開けてたりしない………?」

「してないよ。ほら早く」

「〜っ、」


……えっ。

彼女が近づく気配がしたが、それと同時に瞼の向こうが一気に暗くなった。目のあたりに、違和感。

「……何で目隠してるの? ちゃんと閉じてるよ」

「解ってるけど恥ずかしいの…! いいでしょ…!」

ほのかが今どんな顔をしているのか、声から何となく想像できた。


やがて、顔が近づく気配がして、それからそっと唇が触れた。……昨日と同じ、ほんの一瞬。


「はっ…恥ずかしい……」

速攻で離れたらしい彼女は、僕に背を向けて体育座りで顔を膝に埋めていた。


……そして僕も、再びの彼女からのキスで、顔がどんどん熱くなるのを感じた。

キスしろって言ったの自分のくせに…………!


深呼吸を何度か繰り返して、手で顔に風を送って、何とか顔の熱を下げる。


「……ほーのか」

「みっ、見ないでまだ……! 恥ずかしいから………っ!」

「…昨日みたいな顔、絶対、他の男に見せないでね」

「えっ……!?」

その言葉で、一気に顔を上げたほのか。顔も耳も真っ赤。

「えっ、ちょっと…ど、どういうこと……?」

「ん?」

ねえ昨日私何やらかしたの…!? と、ほのかは、立ち上がってテーブルの方に向かう僕の後について立ち上がった。


…ほのかがお酒を飲む時は注意必須だと、僕は心の中に深く刻んだ。






( そういう顔は )