これって幻とかじゃないよね?
なんで私の目の前にあの水上颯真がいるの?
「せいかーい。分からなかったらどうしようかと思った」
いたずらっ子みたいな顔で微笑んだ。
あの時以上に近い距離で目を合わせてる状況にもう色んなところが麻痺してる。
「み、水上さんが...なんで.....?」
今更水上さんに掴まれた手が熱を帯びる。
探し物をしてた時に声をかけたのは水上さんということになる。
どうして彼自ら私なんかに声をかけたの?
きっとあのぶつかった時のことなんて忘れているはずなのに。
あんなの日常の中の一コマにすぎない。
そんなに印象の残る出来事でもないし、一般人を大人気の水上さんが覚えているとは思えない。
私を覚えていないと仮定すると声をかけたことがさらに疑問。



