もうあの時にバイオリンとの縁は切ったんだ。
「家のために諦めたんじゃないの?詩織がバイオリンを辞めたのは確か俊輔が生まれた年だったわよね」
「....確かに、バイオリンはお金がかかる習い事だって知ったから辞めた部分もある。でも、もう未練はないよ」
私って芝居すること、こんなに下手だったっけ?
こんなバレバレな芝居をしてもすぐに見抜かれてしまう。
「私は詩織がまだバイオリンの楽譜を集めてることを知ってるわ。ずっとやりたかったんでしょ?」
「知ってたの!?」
私が3人部屋の自分の机の引き出しにバイオリンの楽譜を集めていること。
親が普段、部屋に入ってくることはないから安心してたのに。



