「本当によかったんですか?リムジンで帰らなくて」
「大丈夫だよ。さっきも言ったでしょ?」
「そうなんですけど....」
本当に良いのか気になって何度も同じことを聞いてしまう。
もう夏だからいつもよりは明るいけど、遅い時間なのは変わりない。
「気にするな。歩いて帰るのは何もこれが初めてじゃない」
「えっ、そうなんですか?」
「あぁ。何度かある。だからそんなに心配しなくても平気だ」
「分かりました」
私が見かけた限り、毎日リムジンが来ていたから。
「そんなに僕のことが心配だった?」
「それはっ...!」
あの朱雀グループの御曹司なんだから、心配だよという言葉を飲み込んだ。
この発言はしてはいけないと、脳が警告してきたからだ。