「...そういうわけじゃないんだけど」
「じゃあどういう意味なのよ?」
「昨日、沙理ちゃんが言ってたでしょ?朱雀さんは他の人とは違う瞳をしてるって」
「あぁ、確かそんなことを話してたわね」
「その意味が少しだけ分かった気がするんだ。朱雀さんは綺麗な瞳をしていた。だから、その瞳を見てたら断れなかったんだ」
私にはお金持ちの世界なんて分からないけど、彼の瞳に嘘はないと思う。
「そうだったのね。あたしの目は確かだったってことね」
急に沙理ちゃんは得意げになった。
「それで、普通を教えてほしいってどういうことなの?」
「私も完全に理解できてはいないんだけど、一般庶民の生活を教えてほしいってことらしいよ」