「今まで何度も翔和と一緒に暮らすために迎えに行こうと思ったことはあるわ。だけど、どうしても行けなかった」
朱雀を捨てたことが負い目になっているのかな。
一歩を踏み出せない理由はそこにあると思う。
海城さんは何度も迎えに行こうとしたのは、あの家に1人にしてしまった翔和をずっと心配していたから。
「いつか私の覚悟ができたら会えるかもしれない。もし、朱雀が気の迷いで許してくれたのなら」
姉弟が会うのに、許しなんていらないはずなのに。
「意地になっていたのかも。私が有名になれば嫌でも私の存在が目に入る。消された朱雀に私の存在を示したかったのかもしれない」
やっぱり自分の生まれた家を完全に消去して捨てきれる人なんていないと思う。