「わ、私はその、この温室に憧れてこの学校に来たんです」
「でも悪いけど。そこ、退いてくれるかな?」
「……」
「あの。すいません……」
この温室に良平がひょこっと顔を出した。
「部長さん、そいつは俺の幼馴染みなんですけど。花は本当に詳しいですよ。家に温室があるくらいで」
「家に温室が?本当かい?」
すみれは涙を浮かべて顔でうんとうなづいた。
「それに。たぶんこいつはここにある花の名前だって全部言えますよ」
「本当かい?じゃ、この花は」
蕗本はまだ蕾の植物を指した。
「……これはシャクヤクですね。あっちがボタン、あ?見て良ちゃん」