「……勉強も生活態度も、ちゃんとやります。だから、俺に守らせてください……」

「理由を聞こうか」

疾風はキリと顔を上げた。

「アイツはずっと学校に通いたがっていたんだ!俺は元気しか取り柄がないし、幼馴染だから……せめてそばで見守ってやりたいんだ」

「……」

「アイツは中等部も通えてないから、知り合いは俺だけなんだ!父さん」

「安い恋愛感情では女の子は守れないぞ」

「そ、それは」

「いいか!女の子を守ると言うのは口で言うほど簡単ではない!ましてや病弱なお姫様だ。お前が危険な目に遭うし、誰よりも強くなければならない!疾風。お前にその覚悟があるのか!」

「はいっ!」

息子の曇りのない目に父はすっと目を伏せた。

「本気なんだな」

「……はい」


少年の覚悟を見た父は、ふっと息を吐いた。


「わかった。理事長には引き受けると返事をする。行きなさい……」

「はい!よろしくお願いします」


そういって頭を下げて部屋を出て行った弟と入れ替わりに入ってきた長兄は話を部屋の外で聞いてしまったと父に微笑んだ。


「全く、素直じゃないな?最初から疾風にやらせるつもりだったのに」

「……男子たるもの、女性を守るには相当の覚悟が必要だ。それに私だって疾風が心配だったのは確かだ」

「まあ。無茶するかもな。相手が美友ちゃんなら」

すると父はサッと立ち上がった。

「あの眼、凛々と輝いておった。『男子三日会わざればかつ目せよ』とはこの事だ……。ところで、お前だな?私のプリンを食べたのは」