しかしここで手話をした美友に関心を持ったクラスメイトが彼女を囲みはじめた。
これを見て日永は疾風を廊下に手招きした。




「思ったより飛ばしてくるな?」

「わかってるならもっと助けてよ……」


そこに3年男子の海棠が髪をかきあげながらやってきた。



「どう。調子は」

「彼女だけは絶好調だね」

「全く。歌わせるんじゃねえよ!」



しかし海棠は止めようがなかっと話した。


「いきなりあのソプラノだもの。俺も歌うしかなかったよ」

「でも一番綺麗な声は疾風だったぞ?」

「うるせ!ところでなあ。さっきは何なの?どうして手話なんかさせたのさ」



すると海棠はにっこり微笑んだ。


「だってさ。なーんにもわかってないんだもん。だから1年の席から移動したんだ。そうしたらいきなり手話で説明する!っていうわけさ?わかった?」


海棠は睨む疾風の頭をグリグリしてそう言った。


「ふん!」

「まあ。そう怒るな疾風。初日は成功だろ?な、薫兄?」


「そうだな。あの笑顔を見れば……」




そんな三人は教室にいるお嬢様を見つめた。

その嬉しそうな微笑みに、三人はそれぞれの持ち場へと散っていったのだった。





つづく
2020・2・27