頭の血管が切れそうな理事長を前に彼は外した眼鏡を拭きながら尋ねた。

「私は嫌とは言っていません。あのですね。私よりも女性の先生の方がよろしいのではないですか?同性の方がいいですよ」

「ダメじゃ!ワシは他人を信用しない!」

「私も他人ですけど……」

そんな日永に理事長は腕を組み目をそっと伏せた。


「お主の婆さんは美友の母の乳母をしていたのは知っておるじゃろう。だからワシはお主を信用しておるのだ」

「それは光栄ですが」

そして理事長はスマホをほら、と見せた。


「この写真をお前のスマホに転送しておけ。ワシにはできんので」

「では失礼して。それにしても似ていませんね」

「……フフッフ、ハーハハハ!愚か者め、だからお主はまだまだなんじゃ……」

ドヤ顔の爺に日永は嫌悪感をあらわにした。


「やはりこの話はなかったことに」

「待て!?いや。中身はワシのそっくりなんじゃ」

「男なんですか?」

「違う!違うの!逢えばわかる!な、日永よ、機嫌を治せ、ほら」

そういって理事長はチョコレートを彼に渡した。

「要りません」

「そんなこと言うな。美友がくれたんじゃぞ?ワシは血糖値が高くて食えんのじゃ」

こうして使命とチョコを爺にもらった日永は教室に夕暮れの職員室に戻っていた。
仕事に戻る前にスマホの写真を見ていた。

……可愛いな……