学生達の中でこれを必要とする人がいないので、生徒達も不思議に思っていたが、美友は一生懸命伝えているので、皆、意味不明なのに彼女を見ていた。


「……さらにですね。棚から!いいですか。棚からですよ?ぼた餅が落ちてきたら。これは君達、どうしますか?いきなりですよ?」

このくだらない話をまじめに必死で手話する美友が可愛らしいので、生徒達はクスクス笑い出した。


これを見た岩鉄は、自分の話が生徒に受けていると勘違いし、子供のように嬉しそうに満面の笑みを浮かべて話を続けた。



「はい!落ちてきたら受け取る人ー!……おやおや?いないですか??では、床に落とすのですか?これは食べられない。つまり『棚ぼた』はラッキーではないのです……」

この時、教師が無情にもタイムアップを告げにきたので、岩鉄の熱弁は強制終了になってしまった。



「というわけで。何事も努力が必要じゃ!以上」


こうして終わった学園長の話は、美友の必死な手話を称えた大きな拍手を響かせた。これを自身の話の効果と勘違いした幸せ岩鉄は美友に気づかず頬を染めて席に戻っていた。


そんな美友は壇を降り、なぜか保護者席へと向かっていたのだった。




こうして終わった入学式だったが、保護者はこのままで生徒が退場になったので、疾風は美友を迎えに行った。


「おい、美友、何やってんだよ」

「わかってます。おばさま。それでは」

……ありがとう、と新入生の母親は彼女に手話で感謝した。


「いい調子だね!新人ボランティア」

「先ほどの先輩ですね?こちらこそ活躍の場を与えてくださって」