「まずいな?もう来たぞ」
「く……でも重くて」
「俺も持つから急げ!」


この時、彼らの様子を見ていた疾風は、背後に立ち拳を構え目を据えた。

「先輩……今、加勢します」
「なんだって?」

彼はふうううと息を吐いた。そして目を見開き、両手で押すように氣を彼らに放った。

「はぁっ!!」

「え」
「うわあああ?」
「軽くなったぞ?」
「今のうちだ」

こうして2台目のゴールも片付けた校庭には救急車がやって来た。その背後には美友と松本と長谷川が見えた。疾風はすぐに美友に駆け寄った。
そして校庭にヘリが不時着した。その強い風に三年男子と山下はボールポストにしがみ付いていた。

「大丈夫か美友?」
「うん……」

強風から自分を守っている疾風の腕の中から美友はドクターヘリでやってきた医師を見ていた。その顔を見て安心した美友は、ヘリが飛び立つまで彼とこうしていた。

やがてここに救急隊が顔を出した。

「お疲れ様でした。ええと君は」
「桜田美友と申します。私。数ヶ月前まで北山附属病院にお世話になっていたので」
「それで知っていたんですか」

救急隊員の驚く顔に疾風はもういいだろう、と話を切った。

「すいません。後は直接学校とやりとりしてください。いくぞ、美友」
「は?はい」

この場に教頭がやって来たので疾風達は大人に任せて学校に入って行った。ここでちょうど1時間目が終わるチャイムが鳴った。

「しかし。凄かったね」
「うん。私もまだドキドキしているわ」

そんな松本と長谷川に疾風は真顔を向けた。

「あのさ。今の事はさ。俺と美友は誘導の手伝いをしただけにしてくれないか」