「お爺ちゃん。これ、愛ちゃんに作ってもらったんだよ」


 幸喜が毛糸の帽子を見せた。

「可愛い帽子、手編みだね」


 忍はそっと雪を見つめた。


 帽子とマスクをつけている雪。

 しかし雪を見ると、忍は胸がキュンとなる。


 この感覚はフェアディーと出会った時と同じだと感じだ。


「わざわざ有難うございます。作ってもらえて、嬉しいです」

「い、いいえ…。赤ちゃんに、似合うといいですね…」



 忍はそっと、愛に帽子を被せた。


「ぴったりだ。良く似合っているよ」


 ベビーカーを押して、忍は雪の傍に愛を連れて行った。



 ベビーカーの中の愛を見て、雪は嬉しそうに笑った。


 愛も嬉しそうに笑った。


 そして雪に手を伸ばしてきた。


 戸惑った雪だが、そっと愛をの手を握った。


 手を握らると、愛はとても嬉しそうに笑いだした。


「すごいね。愛がこんなに笑うの、初めて見たよ」


 そっと愛を抱き上げた忍。


 愛は忍を見ないで、雪を見ている。


「抱いてみて下さい。この子を」

「え? 」


 愛を差し出されると、雪は戸惑ってしまった。


「大丈夫。こうやって抱っこしたら…ねっ」


 忍は雪に愛を渡した。

 
 雪の腕の中に行くと、愛はまた喜んで笑い出した。


「可愛い…」


 愛につられて雪も笑った。


 マスクで表情は半分隠れているが、目元だけ手も笑っている雪はとてもかわいい。


 そんな雪を見ると、忍の胸は大きく高鳴った。



「雪、お待たせ」

 冬季がやって来た。



「冬季さん、見て可愛い赤ちゃん。愛ちゃんって言うんだって」


 雪が抱いている愛を見て、冬季はギクッと表情が怯んだ。


 そんな冬季を見て、忍は何かを感じたようだ。



「おじちゃん。あの赤ちゃんね、お爺ちゃんの子供なんだって」

「え? 」


 驚く冬季を、幸喜はじーっと見つめた。