「…分かったわ、作ってみる。…愛ちゃんかぁ…きっと、可愛い女の子なんだね」
「うん、とっても可愛いよ」
幸喜と雪が笑い合っていると、冬季が迎えに来た。
「あ、おじちゃんだ」
幸は冬季を見ると、ちょっとだけ笑った。
「雪、待たせてごめんね」
「大丈夫。幸喜君と、楽しく話していたから」
「そっか。じゃあ、行こうか」
「幸喜君またね」
幸喜に手を振って、雪は冬季と一緒に帰って行った。
去り行く冬季と雪を見て、幸喜は…
「あの人、いつまで嘘ついているんだろう? …お姉ちゃん、奥さんじゃないよね? 」
去り行く冬季の後姿に、幸喜が呟いた。
3日後。
雪は幸喜に約束通り毛糸の帽子を作ってきた。
青色で白い雪ダルマの絵柄が入っている毛糸の帽子を見て、幸喜は大喜びしている。
「気に入ってもらえて嬉しい。これ、赤ちゃんの分ね」
ピンク色で赤いお花の絵柄が入っている毛糸の帽子。
「すごーい。これはお花が入っているんだね。愛ちゃんにとても似合うと思う」
幸喜の両手にすっぽり収まるサイズの毛糸の帽子。
色使いもやさしくて、見ているとホッとする。
「可愛い帽子だね」
声がして、雪は驚いた目で振り向いた。
振り向いた先には、愛をベビーカーに乗せている忍がいた。
「お爺ちゃん。どうしたの? 」
「たまには、夕方のタイムバーゲンに行ってみたくて来ていたんだ。幸喜がいるのが見えて、いつも話してくれるお姉ちゃんと話しているのかな? と思って、来てみたんだ」
「そっか」
雪はじっと、忍を見つめている…。
「幸喜がいつも、お世話になっています。私は、幸喜の祖父で宗田忍と言います」
「…忍…さん? 」
雪の頭の中で、なにか忍の名前に反応している…。