雪と会うようになって1週間過ぎた頃。
幸喜はちょっと早めに帰ってきて、忍に雪の話しをした。
「へぇー。総務にいる上野冬季さんかぁ。あまり知らないけど、お父さんなら知っているんんじゃないか? 」
「そっか。その人の奥さん、雪さんって人に僕よく会っているんだ」
「奥さんに? 」
「うん。いつものスーパーで、僕が学校から帰るときに通る時間と一緒くらいで、お迎えを待っている間だけだけど。お話ししているんだ」
「そんなに年の離れた人と、何を話しているんだ? 」
「学校であった事とか。そのとき、思いついたことだよ。お姉ちゃん、とっても優しいし。お姉ちゃんと話していると、なんとなく愛ちゃんと一緒に見えるんだ」
「愛と? 」
「愛ちゃんと似ていると思うよ。同じ、妖精さんだもん」
「妖精? 」
「うん、雪お姉ちゃんは妖精さんだよ。僕には見えるもん、お姉ちゃんの背中には綺麗な羽があるから」
「…そっか…」
幸喜の話を聞いていると、忍は何となく雪の事が気になってきた。
夜。
幸喜も愛も寝た後に、忍は夏樹に電話をかけた。
(総務の上野冬季? 確かにいるけど、どうかしたの? )
「ああ、その人の奥さんと幸喜が最近仲良くしているようなんだ」
(奥さん? 総務の社員って、確か総務部長以外の男性社員はみんな独身だって聞いているけど? )
「本当か? 」
(うん。結婚した報告も聞いていないよ。まぁ、交際関係は良く分からないけどね)
「そうか。奥さんって幸喜は聞いたらしいけどな」
(ふーん。ちょっと総務の人に、聞いてみるよ。幸喜がお世話になっているなら、一度ご挨拶もしておかなくちゃね)
「ああ、そうだな」
(幸喜はどう? 楽しんでいる? )
「毎日楽しそうだよ。夕飯を作ってくれる時もあるが、家でもやっていたのか? 」
(ああ、空と一緒によく作っていたよ)
「そっか。幸喜が来て、父さんも楽しくやっている。何も心配するな」
(うん。赤ちゃんは大丈夫? )
「ああ、元気だよ。また大きくなったようだ」
(赤ちゃんの成長は早いからね。今度の休みに、僕と空も遊びに行くから)
「そうか、楽しみに待っているよ」
電話を切って、忍は和室に行った。
愛がベビー布団で眠っている。
あまり夜泣きもし泣くなり、良く寝てくれる愛。
愛の寝顔を見ていると、やはり、フェアディーと重なって見える。
「勘違いじゃないって、信じているよ。…ねぇ愛。…お母さんは、どこにいるんだ? 」
愛の寝顔を見て、忍は尋ねてみた。
何も答えない愛を見つめて、忍はそっと微笑んだ。