「まぁいいや。ねぇお姉ちゃん。これからも、僕と会ってくれる? 」
「私に会うの? 」
「うん。もっと沢山お姉ちゃんと会いたい。そうしたらね、きっとお姉ちゃん本当の自分を思い出すよ」
「本当の自分? 」
よくわからない顔をしている雪。
「雪? どうかしたのか? 」
車から1人の青年が降りてきた。
30代後半くらいの、クールなタイプのイケメン。
ガッチリした青年で、びしっとしたスーツを着ている。
「あ…冬季(ふゆき)さん。すみません、お待たせしてしまって」
「いや、大丈夫だよ。それより、どうかしたのかい? 」
「いえ。この子に、話しかけられただけです」
冬季は幸喜を見た。
幸喜はじーっと冬季を見ている。
「あれ? 君は…もしかして、社長のお子さんじゃないかい? 確か…幸喜君だっけ? 」
「僕の名前は幸喜だけど、おじさん誰? 」
「僕は、宗田ホールディングの総務にいる上野冬樹だよ」
「お父さんの会社の人なんですね」
「ああ、そうだよ」
「このお姉ちゃんは、おじさんの家族の人? 」
「ああ、家族だよ。僕の、奥さんだから」
奥さんと言った冬季。
だが、ちょっと目が泳いでいるのを幸喜は見ていた。
「ふーんそうなんだ。ねぇ、僕お姉ちゃんともっと遊びたいから。時々、会ってもいい? 」
「え? 」
冬季は雪を見た。
幸は良く分からない顔をしている。
「ねぇ、いいでしょう? 」
「うーん。お姉ちゃん、ちょっと病気なんだ」
「え? 病気なの? 」
「うん。だから、あんまり遊べないよ」
「え? 遊べないのに、働いてていいの? 」
「あ…それは…」
答えに詰まった冬季を、幸喜はじーっと見ている。



