その後、忍は警察に赤ちゃんの事を届けた。

 全く手掛かりがないため、どうするかと話になり

「ハッキリ判るまで、我が家で預かってもいいですか? 」

 と言い出した。

 手続きを踏めばいいと言われて、忍は大喜びした。



 捨て子のようだが、着ているベビー服は高級品のようで可愛い。

 傍に置いてあった荷物には数着の着替えと、オムツと粉ミルクが入っていた。



 どれも手作りで、とても丁寧に縫われている。



 会議があるため、忍は一旦会社に戻った。


 赤ちゃんを暫く預かると言い出した忍に、夏樹は驚いていた。


 しかし赤ちゃんを抱いている忍が、なんだか幸せそうで。

 ずっと悲しそうにしていた忍を思うと、暫くの間でも一緒にいることはいい事なのかもしれないと思った。




 会議の間は、夏樹の妻である空に赤ちゃんを見ててもらう事にした。


 今は専業主婦の空は、会議が終わるまで1階の待合室で赤ちゃんを見ている事にした。




 赤ちゃんを抱いている空は、とても穏やかな顔をしている。

 
 
 
 
 会議が終わって忍が降りて来た。


「あ、お父さん」

「赤ちゃんはどう? 」

「はい、今ミルクを飲んで寝たところです」


 空は忍に赤ちゃんを渡した。

 
「見ててくれて有難う」


 赤ちゃんを受け取ると、忍はとても嬉しそうに微笑んだ。


「お父さん、本当に1人で大丈夫ですか? 赤ちゃん、夜泣きもしますし。お風呂に入れるのも、大変ですよ。まだ首もしっかり、座っていませんし。この先、寒くなって来ると熱を出したりします」

「心配ないよ、これでも夏樹と一樹を育てて来たんだから」

「でも、1人では何かと大変ですから」

「大丈夫だって」

 荷物を持って、忍は歩き出した。


 空はちょっと心配そうに、歩いて行く忍を見ていた。