「ノートと……
教科書と……パスと財布と……」

小学生の頃からの習慣で

ついつい指差し確認で準備をしてしまう。

「今日も……ヨシッ!」

忘れ物が無いことを確かめて

一階のキッチンに向かうと……。

先に支度を済ませた祥兄ちゃんが

リビングでのんびりとコーヒーを飲んでいた。

「祥兄ちゃん、おはよう。
今日はゆっくりだね。」

大概、私が降りて行く頃には

玄関で靴を履いているから珍しい。

「今日は、車だからな。」

電車で通勤することの方が多いお兄ちゃんだけど。

行事前やテスト前。

後は…………

夜の見回りや研修会の時に、車で行ってるみたい。

「今日は、遅くなるの?」

何気なく聞いた質問に

嬉々として、こっちを見てる。

「今日は、来週の遠足の下見だからね。
和花は、俺が遅いと淋しいのか?!」

内心は………

『淋しいよぅ。』だけど…………。

そんな事言って、好きなことがバレちゃうと困るから。

「そんな訳ないでしょう。
もう高校生なんだよ。
お兄ちゃんが遅いなら
お義父さんにチョコレートケーキをおねだりしようかなぁって思ったの!」って
イジワルを言ってみる。

祥兄ちゃんは、チョコレートケーキが大好きなの。