「いよいよ………明日だなぁ。」

「…………うん。」

「いっぱい、楽しんでこいよ。」

「…………うん。」

「たまには、俺を思い出せよ。」

「…………うん。」

「ちゃんと………俺の所に……
帰って来いよ。」

「……………う………んっ………くっ……ひっく。
うっ…………。」



ベッドに並んで転がって。

子供の頃のように手を繋いで………。

でも、子供の頃と違うのは………

小指を絡めて………指切りして………。

泣きじゃくる私の小指に

誓いのキスを………寄越した事。



「そんなに泣くなよ~
笑顔で行ってくれないと………
引き留めたくなるだろう~」

そうだよね。

私は………淋しいって泣いていても。

明日、飛行機に乗って飛び立つ頃には。

新しい生活に、ワクワク胸を踊らせてると思う。

仲良しの夏生や響と大騒ぎして

笑顔の時間でいっぱいになる。

けど祥ちゃんは………

私の居ないお家や学校で

今まで通りの生活を送らないといけないの。

おまけに、学校は夏休み。

お仕事は、もちろんあるけど。

いつも程は、忙しくなくて………

退屈な時間がいっぱい出来てしまう。

2ヶ月………いっぱい一緒に居たから………

余計淋しいよね?

「…………ごめんね。」

特別な事は、言ってないのに。

生まれてからずっと一緒に居た祥ちゃんだから

私の思いは、全て伝わっちゃうの。

「…………気にするな。
誠も澤先生もいるし。
俺よりクマさんの方が、落ち込むだろうから……
まぁ、なんとかなるよ。
それに………これがあるからな。」

そう言って、合わせた小指をほどいて。

祥ちゃんにもらった指輪と………

同じブランドのリングを、カチッと鳴らした。