「行ってきます」


ガチャガチャと音を立て 洗い物をしているお母さんと
コーヒーの湯気でメガネを真っ白に曇らせてるお父さんに 私はそう声をかける。


「木春!ちょっと家を出る前に優希を起こしてきてくれる?」


お母さんにそう言われ私は 弟である優希の部屋に
向かい 丸まって寝ている弟の布団を引き剥がした



「さ、寒い!!寒いよ姉ちゃん!!」


まだ春と言えども 肌寒い日が続いているのに
半袖半ズボンで寝ている弟


「もう5年生になるんだからそろそろ自分で起きないと」


弟の優希は この春小学5年生になる


「それでも姉ちゃんは起こしに来てくれてるじゃん」


着替えながら二ヒヒと無邪気に笑う優希

何歳になっても優希は お姉ちゃん子なんだなと思う



昔から共働きで忙しい両親の代わりに 弟の面倒を見ていたせいなのか すっかり親より私に懐いてしまっている


反抗期である年頃のはずだがそんな素振りを見せない優希は 周りの友達からシスコンと馬鹿にまでされている



だけど 私はそんな優希が大好きだ


「あ!姉ちゃん!今週末のサッカーの試合見に来てくれるよね?」



優希はサッカーのクラブに通っている

コーチにも一目置かれているほどのなかなかの実力を持っているらしい


コーチや周りの人達からは 才能だと言われているが
私は知っている


優希が昔から サッカーが大好きで 練習に力を入れてきた努力家だということを




「もちろんだよ 頑張ってね」



私はそう言い 優希の頭をポンポン とする


私もどっちかというと ブラコンに入るのだろうかと
考えていると



「木春ー!遅刻するわよ 優希!さっさとご飯食べちゃいなさい」



お母さんのそんな声が聞こえてきて 私は時計を見る


「わっ!ほんとに遅刻しちゃう!」


新学期早々遅刻をしかけている



「い、いってきます!」


「行ってらっしゃい」


両親と優希にそう言われ 私は慌てて家を出た