愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「重いんだけど」

本当は平気だけれど、わざと突き放す。
が、瀬野は離れようとしない。


「あと少しだから許してよ、これぐらい」


確かにあと少しだ。
あと3時間もすれば、私たちは教室で授業を受けている。


「本当に少しだからね」
「……うん、ありがとう」


これはきっと何かの夢だと思うことにする。
できれば瀬野と二度と絡むことがないよう願いたい。

昨日と今日でだいぶ精神的に疲れた。


「本当はこのままサボりたいな」
「馬鹿じゃないの。私は絶対に嫌」

「川上さんを脅して側にいさせようか」
「なっ…」

「なんてね、そこまで酷いことはしないよ。
俺のことをバラさない限り、ね」


また軽く脅してくる瀬野。

冗談っぽく言っているけれど、これは再度脅しているはずだ。



「思ったんだけど、私も瀬野が暴走族の一員だって秘密を握ってるわけだから脅せるんじゃない?」

「何馬鹿なことを考えてるの、川上さん」
「なっ…」

「もし川上さんが誰かにバラせば、その人も脅される側に立つってこと、考えたらわからない?その上、川上さんも秘密をバラされるわけだし…もう悪循環だよ」

「……っ」


やっぱり瀬野は私の上を行く。
それがまた悔しい。


「だからそんなこと考えないでね。
俺も脅すなんてこと、できればしたくないから」

「じゃあ私のことも脅さないでよ」

「それは無理なお願いだね。それに昨日、俺に助けを求めた川上さんにも非があるんだから」


思わず舌打ちをしてしまう。
こればかりは何も言い返せない。