容姿だけでいったら、薫と柏は圧倒的にカースト上位。
なのに俺なんかと一緒にいる。
これってすごいことだよなぁ。
ただでさえふたりは、世界の違う人間なんだから。
雅 薫と、雅 柏。
兄弟関係の2人は、雅財閥の分家にあたる。
俺や柏よりひとつ年上の薫は、その家の跡取りなんだそうだ。
昔から代々続く、長い歴史のある雅財閥は主に“和”――つまり華道・茶道や日本庭園、和食や着物など日本の伝統や文化の第一人者。
いわゆるお坊ちゃんなんだから平々凡々とはかけ離れていてもおかしくない。
そんなお金持ちと繁華街でクレープを食べてるこの状況が不思議に思えてきた。
「ああほら、ぼーっとしてたらまたビーヤンに食べられるよ」
「はっ! それはダメ!」
「チッ」
「柏また狙ってたな!?」
家がすごかろうが容姿がよかろうが、2人は友だち。
それは変わらない。
クレープのおいしさも変わらない。うまうま。
「2個目食べちゃおっかな~」
「! 俺も!」
「ええっ、ずるい!」
「キユーが遅く来たのがいけないんですぅー」
本当に2個目買ったよこの人たち。いいなあ。
薫はカスタードクリームとバニラアイスをトッピングしたクレープ。
柏は生クリームとチーズケーキを包んだクレープ。
どっちもおいしそう。俺も2個目食べたい。



