薫はかっこいいというより、美しい。
俺と同じ西校の地味な制服すら、その高身長なスタイルのよさでスラリと着こなしてる。
深緑のネクタイもグレーのズボンも、薫が着るとこじゃれて見える。
なんでだろう。
ラズベリー色の髪のせい?
左サイドを編みこみ、右に髪を寄せたヘアスタイルのせい?
それとも両耳に1つずつ付けた、大振りのピアスのせい?
俺もピアス付けたら変わるかな。
でも耳に穴を開けるのって痛そうだし……。
「うーん…………って、あれ!?」
地味さを変える方法を考えてたら、クレープが半分減っていた。
俺まだ一口しか食べてないよ!?
「ん、チョコうま」
「柏~~!!」
「食わねぇのかと思って」
「食べるよ!!」
俺が怒鳴っても、彼は平然ともぐもぐ頬を動かしてる。
うまい、ともう一回言うものだから、俺も美味しそうに食べてやった。
相変わらず柏は浮世離れしてるというか、本能で動くところあるよな。
とてもきれいに染まった金色の髪とか
長い前髪から覗き見える緑色の瞳とか
クレープを丸かじりした八重歯も、どこか危うく、野性的。
薫からもらったらしい灰色のニット帽と、北校の真っ黒な学ランが少し浮いて見えるのはそういう柏の魅力と相容れないからだろうか。



