負け犬の傷に、キス



こめかみをわしづかみにされた男は、口をクレープで塞がれ、まともにうめき声すら出せない。


透明がかった茶色い歯が覗き見え、薫は汚らわしそうに男の頭を放り捨てた。




「おい、うしろ」


「知ってる」




柏の一声に冷淡に返し

うしろから迫り来る男の首めがけて足を振り上げた。


蹴った方向は、さっき男を放り捨てたところ。


クレープを飲み込めずにいる男の顎と、蹴り飛ばされた男の額がちょうどよくごっつんこ。




「あれは二重で痛いだろうな……」


「痛くさせてんの」


「わざとか……」


「どうせ痛覚ないみたいだしいいでしょ」




ご愁傷様、としか言いようがないな。


気絶させるのが得策と理解したら一瞬で終わってしまった。



「あ、あの……おケガは?」



津上さんが震えを隠しながら案じてくれた。




「俺たちはだいじょ……」


「ケガしてるように見えるの?」


「い、いえ!」




……ああもう、薫のバカ。

なんで津上さんにまでケンカ腰なんだよ。




「薫、もうちょっとやさ……」



「うっ、」

「……っ、く」



「……え?」




まじかよ。



ピザ風クレープで顔を塗りつぶされた男1人と、蹴り飛ばされた男がまたしても起き上がった。


失神してたんじゃないのかよ!!