負け犬の傷に、キス



周りからちらほら悲鳴が響く。


ここは繁華街。
言わずもがな大勢の人がいる。


これ以上長引かせるわけにはいかない。



「ひっ、ははは!」

「この程度かよ」

「弱っちいな!!」



5つの傷だらけの体が、また、のそりと立った。


ふらついているのに気づいていないのか、勝気に息巻く。



瞳孔の開いた目をぐにゃりと曲げて

嗤ってる男たちがいやに


もろく、悲しそうだった。




「くっ、草壁くん!」



袖を軽く引っ張られ、我に返る。




「津上さん……?」


「わ、わたし、平気だから!」


「え?」


「わたしのこと、守らなくていいよ」




袖から離れた指先は震えて

顔色は青白く、おびえているのに。



どうして、みんなして、そんなに早く強くなれるんだろう。


津上さんも望空ちゃんも、初めは弱々しく見えたけれど今は全然ちがう。



ちょっとうらやましいくらい。




「見たくないとこ見せてごめんな」




どんな顔をして詫びればいいのかわからない。たぶん、今、そうとう情けない顔になってる。



ケンカから目を背けたいよな。

傷つくところなんか見ていたくないよな。


そういうのからも全部、ちゃんと、守れたらよかった。




「ありがとう、津上さん」




それでも俺のために強がってくれる優しさが、すごく嬉しかったんだ。