負け犬の傷に、キス





「昨日の今日でこんな偶然ある?」


「ねぇな」


「偶然だよ! 偶然!」


「待ち合わせしてたんじゃない?」


「これはしてたな」


「してないって!!」




両サイドの重圧をはね返し、思い切り否定する。


な、なんだよふたりして!

そのなんとも言えないジト目は!


本当にちがうからな!?




「そんなこと言って、ちょっと喜んでるでしょ」


「そ、それは……!」


「今度は否定しねぇんだ」




そりゃ、だって……ちょっとは喜ぶだろ。

仲良くなった子と会えたんだから。




「「顔、赤」」


「赤くない!」




息ぴったりでからかうなよ!


ムキになりながら、ちょうどできあがったクレープを受け取りにふたりを横切った。

甘い匂いに心を落ち着かせる。


俺の顔色は通常だ。体温も異常なし。……たぶん。




「あ、キユー!」


「今度は何……」


「あれ!」




薫の声音が急に強張った。


空模様も様子も、雲行きが怪しくなってきた。



示されるがまま、津上さんのいる方向に視線を移す。

津上さんの背後から、おとといナンパした男5人が忍び寄っていた。




「あいつら……!」


「知ってるヤツら?」


「おととい絡んできた人たちだよ」


「あいつらが? うわさのポニーテールに殺られて懲りたんじゃないの?」


「懲りてなかったみたいだな……」




痩せ型の男たちは、俺たちに気づいているようだった。

この間の仕返しってわけか。