「お兄さんケガしてるの?」


「し、してな……いたた!」




不安そうにする女の子に向けた笑顔がピシリと固まる。


白薔薇学園の女子が右の足首に触れたせいで。




「やっぱり……」


「あ! 青くなってる!」




この場は隠しておこうと思ってたのに。

やっぱり俺じゃ格好つかないな。



「お兄さん痛い? あたしのせい?」



また泣きそうな女の子に、あわてて頭を振る。



「違うよ! これは……えーっと……そ、そう! あの石のせいだ! あの大きい石さえなければグキッてならずに済んだよ!」



テキトーな言い訳をして石を遠くに飛ばす。

ウソへたくそか、俺。




「だからきみが気に病む必要なんてないんだよ。きみを守れてよかった。お互い助かったんだからそれでいいんだよ」


「お兄さん……っ」




女の子の黒い髪をさらりと撫で、にっこり微笑んだ。


あれ?

そういえば、痛みが若干引いたような……。



「……これでよし、と」



視線を下げれば、右の足首に花柄のハンカチが巻かれていた。




「えっ、えっ。これ……え?」


「勝手にすみません。応急処置させていただきました」


「あ、ありがとう……ございます……」




すごい。一瞬で応急処置してくれたなんて。

白薔薇学園の生徒ってなんでもできるんだな。