わたし変なこと言った?

強いところって表現がおかしかった?


でもそれくらいしかわからないしなあ。



ソウライ――双雷の名前は、この街ではとても有名だ。



ぎゃあぎゃあ騒ぎ立てる烏合の衆に反して

双雷は自警団のような存在。



強くて、かっこよくて。


一部の女子の間ではファンクラブ的なものもあると聞いたことがある。



だけどわたしが知ってるのはその程度。

世界がちがうって、そういうこと。




「その双雷の一員なんですか?」


「ええ、まあ。これでも一応、リーダー的立ち位置なんですよ」




自信なさげに背中を丸めていた男の子は、わたしのほうを一瞬見つめる。


すぐに地面へ外してから、背筋を伸ばして

また視線を交わらせた。




「改めまして、双雷11代目総長の草壁希勇です」




総長……。

って、えらい人、だよね。




「す、すごい、ね」


「いやいや、すごくないですよ。総長は総長でも、いっつも敵から逃げてばっかで……ついには“負け犬”なんて蔑称までついたんですから」


「でも! わたしのこと守ってくれたじゃないですか!」


「そりゃ守りますよ」




そうすぐに返した男の子――草壁くんは、オレンジ色の光を眩しそうに目を細めた。


わたしに微笑んでくれてるように見えた。




「俺じゃない誰かが傷つくのは嫌だから」