わたしと男の子はベンチに座った。


男の子との間にある、ほんのわずかな隙間がもどかしい。




「あ、あの……お友だちはよかったんですか?」


「いいんですいいんです。どうせまたあとで会えるし」




あぁ、いいなぁ。

簡単に会えるんだ。


わたしはそれなりに勇気を出して会いに来たんだけどな。




「さっきはほんとに、薫……俺の友だちがすみません。急にバカとか言って。他校に来るのって、けっこう勇気要ることなのに」




ちょうど考えていたことを言われてドキリとした。




「足の手当てもそうですけど、クッキーを用意してくれたりとか、すごく嬉しかったです。まさかまた会えるとは思ってなかったんで、俺もちゃんとお礼を伝えられてよかったです」


「足は大丈夫ですか?」


「はい、もう痛みはないです」


「……く、クッキー、苦手じゃありませんでした?」


「全然! 好きですよ」




この人は行動だけじゃなくて言葉も真っ直ぐで。

いちいち心臓を騒がせる。




「それにしてもよく西校だってわかりましたね? うわさで聞いたんですか?」


「制服で西校かなって思って来たんですけど……」


「あ、制服か。そっか、そうだよな」


「……あの、うわさって?」