不用心だな……。
恐る恐る開けてみると、隙間から望空ちゃんの靴が覗き見えた。
……望空ちゃん、いる。
ただやっぱり物音はしない。
電気もついてない。
ここだけ真夜中みたいだ。
「か、勝手に入るよ……?」
おじゃまします……。
一応許可を取りながら家に上がった。
望空ちゃんどこだ?
雨の匂いをまとった自分の気配だけはしっかり確認できるのに、望空ちゃんの気配はまったく感じられない。
リビングの扉の手前まで来た。
……ま、まさか。
この扉を開けたら首を吊った望空ちゃんが……なんてこと、ない、よな?
血の気が引いていく。
ないない! ありえない!
ちょっと前に望空ちゃんから直接生きる宣言聞いたばっかりだし。
大丈夫。
大丈夫……だよな?
ごくりと生唾を飲み、覚悟を決めて扉を開けた。
「望空ちゃんっ!!」
――ゴロゴロ……
――ピッシャーン!!
雷が落ちた。
真っ暗な部屋が一瞬まぶしくなる。
ソファーの横に散らばった写真たち。
その奥に、放り捨てられるように置かれたアルバムと、電源の切れた携帯。
その写真を眺めてるようで、何も視ていない、ワラ人形のようなあの影は――望空ちゃん。
ソファー近くの白いカーペットの上で座り込み、ただただ放心していた。
泣いてもない。
悲しがってもいない。
怒ってもいない。
本当に何も、感情を宿してない。
あの、デクノボウの望空ちゃんだ。
あのときよりひどかった。



