2週間後――


その日は麗らかな初春にしてはめずらしいどしゃ降りの雷雨だった。





雨音があまりにうるさくて、規則正しく午前5時に起床。

寝ぼけ眼で携帯の画面を見てみる。



一本の留守番電話が入っていた。

夜中に、望空ちゃんからだ。




『……両親が……家族、が、亡くなった……ので、しばらく洋館に……い、けま』




プツリと切れた。

絶望に打ちひしがれた声音だった。



小春日和は望空ちゃんから――小さな女の子から、大切なものを次から次へと奪っていく。


それも、奪われたら取り返せないものほど、簡単に。



なんて……なんて、理不尽なことを。




完全に目は冴えていた。



さっきまで散々いら立っていた雨音が、まるで俺を急かすみたいにリズムを速めた気がした。


パジャマを脱ぎ捨てて、クローゼットを開ける。

目に飛び込んだ服を適当に着ると、あわてて部屋を飛び出した。



顔の洗い方も歯のみがき方も雑。

靴下なんか左右違う柄だし、ついでに靴も左右真逆。どうりで走りにくい。



家を出てから足は止めなかった。
履き直しもしない。



傘もささずに望空ちゃんの家の前までやって来て、ようやくびしょびしょの靴裏を地面にぴったりくっつける。



前に一度訪問したことがある。


望空ちゃんを次期総長として発表する前夜。
なりゆきで富樫家で夕ご飯をご一緒することになった。ご飯は絶品だったし、望空ちゃんのご両親はとても優しい人で。


温かい家だった。



荒い呼吸のままインターホンを押す。


あの温かさは、もう、感じない。



中から反応はなかった。

家にいないのか?


もう一度押してみる。


やはり物音ひとつ聞こえてきやしない。



どこかに行ったのか? こんな早朝から?

不審に思い、試しにドアノブに触れる。




――ガチャリ。


「……あ」




開いた。