むくれながらぎゅうっとしがみついてくる夕日ちゃんが、たまらなくかわいくて。
でもそれを今口に出したらいけない気がしたから、黙って抱きしめ返すだけにした。
力強く。
そしたら夕日ちゃんも返してくれる。
同じ分の気持ちを。
――キィ……バタン。
遊戯室の扉が、また、開いて閉じた。
望空ちゃんだ。
空になった白い箱を両手に、うつむいた表情を陰らせてる。
「……望空、ちゃん?」
「っ、あ……ああっ! あたし、おじゃましちゃいました?」
「へ?」
ハッとして今の状況を把握する。
そうだ! ハグしてたんだった!
どちらともなく身を離した。
お互い顔が真っ赤だ。
熱い。
耳の裏まで赤らんでる。
「の、望空ちゃん、どうかしたのか?」
「え。……ええー……?」
「まだ他に悩みがありそうな気がしたんだけど……違った?」
「…………えと、まあ、」
空元気が一周空回りして作り笑顔が崩れていく。
それでも笑おうとするのは、弱い自分が嫌いだから。
「……あたしなんかが次期総長で……」
ボソボソと吐かれた本音は、惜しくもこちらまで届かない。
そのうえ途中で口をつぐまれてしまった。
「い、いえ! なんでも……なんでもありません!」
「……そうか。何かあったら気軽に言ってくれよな?」
「はい! ありがとうございます!」
俺はまた何もできないかもしれない。
俺の出る幕じゃないのかもしれない。
だけど俺に何かできることがあるなら力になりたいよ。
俺と望空ちゃんは似た者同士の仲間だろ?



