ポタリ。
太ももの上の小さな握りこぶしに、拭えない雫が沁みていく。
「あたしが、殺したんです」
「……そ、か」
肯定も否定もしなかった。
できなかった。
自分のせいだ、と。
自分で自分の首を絞めることが、罪であり、罰でもあることを、俺は痛いくらい知ってる。
そうして生きる償い方が、楽で、残酷で、生きづらいことも。
“負け犬”だったからわかち合える。
「だからあたしは生きなくちゃいけないんです。親友の分も。絶対に。こんなところで自殺したら、あっちで怒られちゃいます」
ぎこちなく歪んだ、半月の黒目。
たとえ無理やり作った笑顔だって、たしかに本物だ。
それが望空ちゃんの強さだよ。
「キユー! 愛しのカノジョが来たよー」
「おっ、おい! なんだよ! やめろよ!」
遊戯室に入ってきた薫は空気を読まない。読む気がない。
空気を壊したのわざとだろ! 確信犯め!
「ウソじゃないでしょ?」
「じゃないけども……!!」
そうだよ! 愛しのカノジョだよ!
だけどさ!
それ大声で言うか!?
恥ずいだろ!
ほら見ろ! 周りの下っ端たちの生暖かい笑顔!
望空ちゃんなんか爆笑だよ!
恥ずいだろ!!!



