「今日はこのまま寝かせておこう」
「なら俺が家まで運んでくっす」
そう言って真汰は望空ちゃんを背におぶった。
あまりにも軽々とかつぐ様子に、望空ちゃんがいつの間にか痩せ細っていたことを察した。
元々痩せていたほうだが、今はよりいっそう線が細い。少しやつれてるくらいだ。
友だちのことと関係があるのだろうか。
ちゃんと食べてるのだろうか。
望空ちゃんが小学生のころからの付き合いではあるけれど……。
最近は望空ちゃんは学校の友だちや次期幹部メンバーとつるむことが多くなっていた。
だから気づくのが遅く…………いや、こんなの言い訳、だな。
「望空ちゃんのために何かできないかな……」
遠のく真汰と望空ちゃんを眺めながら、夕日ちゃんの双眼がもどかしげに潤む。
どうしたら支えになってあげられるだろう。
夜闇の中にちっぽけな背中が消えていくのをただただ見つめるほかなかった。
『ノアちゃん、無事に保護』
文字を打つ指が、止まる。
真汰と望空ちゃんが闇にまぎれたあと
今も血眼になってさがしてるであろう仲間たちに連絡しようとする。
が……
これのどこが無事なんだろう。
目に見えるケガはなかった。
でも、心は?
何も無事じゃない。
ボロボロだ。
文字を削除して、端的に送信した。
『ノアちゃん発見。保護』



