「あ、ぁ……ふ、っ、うわあああっっ!!」




それは号泣か、悲鳴か。
はたまた絶叫だったのか。


声が、涙が、枯れるまでむせび泣いた。

泣いて、泣いて、泣き疲れて。


気づいたら望空ちゃんは泣きながら眠っていた。




――あ、足音。



近づいてくる。


望空ちゃんを守るように真汰が立ちふさがる。



曲がり角から現れたのは、赤茶色のツインテール。

夕日ちゃんだった。




「望空ちゃん……!」


「夕日ちゃん……なんで……」


「望空ちゃんをさがしてたの」




さがしてた? 夕日ちゃんも?

でも……真汰からの連絡は、仲間内にしか流れてないはず。




「病院からいなくなったから心配で……」


「病院?」




って、この、目の前にある津上病院?




「望空、どっか悪いんすか!?」


「ううん、望空ちゃんは大丈夫だよ。ふたりはどうしてここに?」


「望空からメールの返信が珍しく遅かったから気になって……」




真汰はいち早く望空ちゃんの異変に気づき、駆けつけた。


戦ってる最中よりも今のほうが真汰の顔色は悪くなってる。



弱りきった次期総長をここぞとばかりに狙ってた先ほどのシーンは、まるで、昔の俺――“負け犬”そのものだ。



望空ちゃんに傷がなくてよかった。

けど……。




「望空ちゃんはなんで病院に?」


「実はね……望空ちゃんのお友だちが、学校の屋上から飛び降りたの。それで望空ちゃんも病院にいたんだけど、血縁関係じゃないから病室には入れなくて。
一緒に待合室で待ってたら……その……お友だちが、ね……亡くなって……。その知らせを聞いたとたん、望空ちゃんが走ってどこかへ行っちゃったの」




友だちが、飛び降り……自殺。


望空ちゃんがらしくないのも、あんなに泣いてたのも、それで……。




「そっとしておこうかとも思ったんだけど……望空ちゃんが『あたしのせいだ』って、何度も自分を責めてたから心配で……」




望空ちゃんの寝顔は心なしか息苦しそうだった。


このままずっと目を覚まさないかのように。


寝息がする。
脈がある。
鼓動が聞こえる。


それでやっと安心できる。