さがさなきゃ。



街中を走り回った。

次第にチカチカとネオンが光り出す。


夕闇が沈んだころ、また通知が響いた。


真汰からだ。



『病院裏の路地』



たったそれだけ。

それでもすぐに理解し、その場所へ向かった。



そしていざ到着してみれば――




「どうなってるんだ……」




――目の前に広がるのは、不可解な光景。



数人の見知らぬ不良に襲われた望空ちゃんと、そいつらを撃退しようとする真汰。



真汰よりも強いはずの望空ちゃんは、地面に座りこんだままピクリとも動かない。

眼球さえも死んだ魚のようにすわったまま。


こんな望空ちゃんを見たことがない。



何があったんだ?



真汰とふたりがかりで不良どもを難なく追い払い、まるでデクノボウのような望空ちゃんに声をかける。




「望空ちゃん! 望空ちゃん!?」


「一体何があったんだよ……っ」




真汰が必死な形相で望空ちゃんの肩を揺さぶる。

反応はない。



望空ちゃんの目元や両頬には、涙の跡が残っていた。


……泣いて、たのか?

どうして?



望空ちゃんの拳がぎゅっと握り締められる。

手のひらの中から真っ赤な血がこぼれていた。



怖かった。

望空ちゃんが、死んでしまいそうで。


もうすでに生きるのをあきらめてそうで。


不安で、苦しくて。



思わず望空ちゃんを抱きしめていた。


頭の上から包み込むように優しく、それでいて強く。




「望空ちゃん……!」


「……っ、きゆ、さ……?」




小さな、小さな、涙声。

聞こえて、また、ぎゅっとした。


バク、バク、と心臓が跳ねる。


望空ちゃんの音のほうが少しゆっくりだった。



望空ちゃんは俺の胸にしがみつき、嗚咽を漏らしながら泣きわめいた。