見開かれた夕日ちゃんの瞳から、涙がひとつこぼれ落ちた。
「売ることの何が悪いの? あたしはね、迷える子羊を“薬”で救ってあげたの。彼らにも必要なことだったのよ」
「それのどこが救いだ!!」
「ドラッグは人を狂わせるものです。本物の薬とは違う。何も治せないし、誰も救われません」
「あなたたちにとってはそうかもしれないけれど救われた子だっているわ。現にあたしの味方だと慕ってくれているじゃない」
メガネの女性は赤い唇をゆるめた。
なぜか泣くのをこらえてるようにも見える。
“薬”が救いなら
あの人は救われたのだろうか。
あの人が一番救われたそうにしている気がするのは、俺だけなのかな。
「わたしみたいに辻先生に相談した人に“薬”を渡してたんですね……」
「全員じゃないわよ? 必要のない人にはあげてないわ」
「……はい。わたしには渡されませんでした」
夕日ちゃん、あの人に相談してたんだ。
それくらい親しかったんだろうな。
「津上さんは独りじゃなかったでしょう?」
「それは……辻先生もです」
高い天井へと消えていくハスキーボイスに澄んだ高音が重なる。
数拍遅れて、赤い唇が開かれた。
「そうね。今は独りじゃないわ。みんな“薬”をあげたらなついてくれて……」
「違いますよ。“薬”のつながりだけじゃないです」
「……え?」



