負け犬の傷に、キス



ストレートロングの髪が揺らめき、夕日ちゃんの顔に少しかかった。

くすぐったそうに夕日ちゃんは顔を横にずらす。




「っ夕日ちゃん!!」




とっさに大声で呼びかけた。


ゆっくり長いまつ毛が持ち上がる。




「……ん……。き、ゆう、くん……?」


「あらあら。もう起きちゃったのね」


「……せんせ……?」




……え?

先生?




「巻き込んでごめんなさいね。こうするしかなかったの」




反省の色のないうすっぺらい言葉。

そっと首筋に触れさせた、研いだ刃の平らな部分。



ぼんやりしたままさまよわせた夕日ちゃんの視線が、俺たちから縛られた両腕へ、そして最後にナイフに向けられる。


全て悟ったように目尻に涙をためた。




「辻先生……わざと香水を多くつけたんですね」


「ええ、そうよ」


「どうして、ですか」




また、先生、って。

聞き間違いじゃなかった。


あの人が白薔薇学園の教師?




「見つからねぇわけだ」




悔しげにユキは呟いた。




「どうして? 彼らがあたしのじゃまをするからよ」


「はあ? 違ぇだろ。てめぇが“薬”を売ってっからこうなったんだろうが」


「“薬”を、売る? 辻先生が……?」




間髪入れずに柏が威嚇する。