負け犬の傷に、キス




「苦しいんじゃなくて、“薬”を失うかもしれないことにおびえてるんじゃないですか」


「だから俺たちが手を引くことを要求してんだろ」




博くんとユキの眼光が鋭くなっていく。

にじみ出る憎悪はひどく冷たい。



メガネの女性に会うまで“薬”に執着しているんだと俺も思ってた。



でも……本当に?


あの人が執着しているのは“薬”なのか?




「薬物使用者は、あなたの味方だって言ってました」


「……そう」


「あなたも彼らの味方なんじゃないですか?」




土曜日の真夜中。
多くの味方が捕まり、いなくなった。


だから苦しんでる。



独りになるのを恐れて。


それがあなたの傷ですか?




「……彼らは迷える子羊だもの。味方になってあげるのは当然でしょう?」




メガネの女性は不敵に微笑んだ。


あの人にとって“売人”って居場所だったのかな……?




「あ、」


「キユー」


「……薫」




開口してすぐ、薫の手が顔の前に置かれた。

思わず口をつぐむ。




「こいつなんかに恩情かけなくていいよ」


「……っ」


「そうですよ。この人にどんな事情があろうと諸悪の根源であることは変わりないんですから」




博くんの周りだけ異様に寒い。

夏めいた気温だと忘れてしまいそう。




「ひどい言われようね」