負け犬の傷に、キス



何はともあれ開いた! すごい! 開いたよ!!

なんだっけ、火事場のバカ力? それのおかげだ!


ひと休みしたいのは山々だけどそうも言ってられない。



夕日ちゃんを助けるのが最優先!



俺は先陣を切って土足で室内に上がった。

リビングらしき部屋に侵入してみれば、




「来ないで!!」




鬼気迫る様子でメガネの女性が叫んだ。



高級マンションなだけあって広々とした部屋。


艶めいたフローリング。

質のいい大きなソファー。


正方形のガラステーブルの上に
乱雑に置かれた銀の灰皿と

白い粉の残る透明な袋と注射器。



それから――




「この子がどうなってもいいの?」




――メガネの女性にナイフを突きつけられた、この世で最も大切な女の子。





「夕日ちゃん……!!」




夕日ちゃんはピクリとも反応しない。


まだ眠っている。

いや、眠らされたんだ。




「なんであなたが夕日ちゃんを……」


「人からの情報があれば簡単なことよ」




味方から、じゃなく、人から。
たぶんうわさも含まれてる。


この人にとって、俺の弱点が夕日ちゃんと知ることも、夕日ちゃんをさらうことも簡単なんだ。



悔しい。


俺がもっともっと強ければ。