負け犬の傷に、キス



扉を手でつかんだ。

ドアチェーンを引きちぎるように扉のすきまを広げていく。



開け、開け、開け……!!


全身真っ赤にさせながら足と手に力を加え続ける。




「そういうの火事場のバカ力って言うんだよ」




ため息まじりに薫の手が扉にかけられた。

その上に柏、ユキ、博くんの手も増える。




「おら、やんぞ」


「ほんとに弁償することになるかもな! わはは!」


「笑いごとじゃないですけど……緊急事態ですからね、仕方ないです」


「みんな……!」




嬉しくてつい力がゆるみかけた。


いけないいけない。

本気を出さなくちゃ。


せーの!と合図をして全員の力を集結させた。



扉がミシミシ鳴る。

ぴんと張ったドアチェーンまで悲鳴を上げている。



メガネの女性は信じられなさそうに驚いていた。


反対側から扉を閉めようとあがくのをやめ、部屋の奥へ逃げていく。




「ぐぐぐぅ……ぅおりゃああ!!」




気合いだ。気合いがあればいける。

限界を越えろ自分!


血管がぶち切れそうな勢いで扉を引く。



――ブチッ。



あ、切れた。

血管じゃなくてドアチェーンが。




「や、やった……ああ!?」




扉が全開になった反動で全員の体がうしろに吹っ飛んだ。



「いたた……」



尻もちをついたのは俺だけ。

他の4人は踏みとどまった。


……なんで俺だけ最後はダサくなるんだよ。不公平だ。