負け犬の傷に、キス



な、なるほど。雅家に講師を任される人もまたセレブってことか。


セレブがセレブを呼ぶ。

俺が不良によく絡まれるのと同じ原理なのかなあ……。




「薫さんやるな」


「こんなところで足止めくらってらんないでしょ」




ユキの素直な賞賛を受け流し、薫はまた俺の手を引いて歩き出した。



監視カメラ付きのエレベーターに乗る。

各フロアを示すボタンの下にある、小さなテンキーボタンを薫が順番に押していく。




「暗証番号ですか?」


「そ。センセに教えてもらった」




確認ボタンを押せば、各フロアを示すボタンの枠が黄色く光った。


このセキュリティーも解除できたみたい。




「20階だったよね」




20のボタン全体を光らせると、エレベーターが上がっていく。


重力に逆らうみたいに浮遊感に包まれる。

空に近くなるにつれてドクドクと血流が悪くなる。



――♪♪



突然の電子音にビクリと肩が震えた。


なんだ、俺の携帯か。

緊張しすぎだろ俺……。


新着メッセージが2件。
今日はやけに通知が来るな。




「……あ、下っ端が、」


「見つかったのか?」


「ううん。繁華街と駅のほうに夕日ちゃんはいなかったって。聞き込みでも声を変えて電話してた怪しい人を見た人はいなかったらしい」




さもありなんと言わんばかりに、柏は片方の口角を引きつらせ、帽子をかぶり直す。