負け犬の傷に、キス



こんなところに本当に売人がいるのかな……。


念には念を重ねてカモフラージュでここから電話かけてきたとか考えられなくもない。とっくに車で遠くに逃げてるかも。



一気に自信がなくなってきた。



いるとしたらどんな人なんだ?

“薬”でかせいでるからここに住めちゃうのか!?




「キユー、行くよ」


「ぅへ!? も、もう!?」


「善は急げなんでしょ」




ド緊張してる俺の手を引いて、薫がさっさと進んでいく。


そうだけど! 言ったけれども!

土曜の戦いとはまた違った不安が……!




早くもマンションのエントランスに入ってしまった。



どこもかしもきんぴかで……いや実際に金色ではないけど、俺にはどれもまぶしく見える。


あのなにげなく置かれてるツボとか
足元にある赤いカーペットとか

いくらくらいするんだろう……。


万、億…………か、考えないでおこう。なんか怖い。




「はい、セキュリティー解除」


「ええ!?」




インターホンの呼び出し装置を薫がいじると、かたくなに閉ざされていた自動ドアが動き出した。


ウソだろ!?

オートロックが壊れた!?




「な、何したんだよ!」


「何って、キユーがツボに夢中になってる間にふつうに呼び出して、ふつうに開けてもらったの」


「呼び出しって誰を……?」




ハッ! まさか住人をたぶらかして……!?




「失礼なこと考えてるでしょ」




ギクリ。

なぜバレた。




「違うから。ここに生け花のセンセが住んでること思い出したから利用しただけ」