負け犬の傷に、キス







「う、うおぉ……」




腹の底から声がしぼり出た。


いや、だって。

これはなんというか。




「こりゃあ……場違い感すさまじぃな」




隣であっけに取られてるユキに激しく同意。


そう! それ! それなんだよ!



超名門の白薔薇学園の近く。

住宅街の中にそびえ立つ高級マンション。



その前に並ぶ不良と改造バイク。

……うん、不つり合いだな。



バイクをかっ飛ばしてきたけど、だんだんエンジン音をとどろかせるのも申し訳なくなってくるほど圧倒的セレブ感。


さっきすれ違った人なんて「ごきげんよう」って素であいさつしてたし、連れてたペットは犬でも猫でもなく鷲だった。



普段俺たちのいるむさ苦しい場所とは大違い。




「場違い? 何が?」




薫だけがきょとんとしてる。


さすが生粋のお金持ち。
さすが“セレブ犬”。

ごきげんようの世界に慣れてらっしゃる。




「これ何階建てなんだ……?」




柏も比較的平然としてる。

天をあおぐようにマンションの最上階を眺めた。




「30階建てです」


「さ、30!?」


「その20階の部屋みたいですね」


「20階の部屋……!!」




博くんの情報ひとつひとつにオーバーリアクションを取ってしまう。


ご近所のセレブなおばさまに変な目で見られた。


すみません。許してください。
こっちの世界には不慣れなんです。