“薬”の売人って一見さんお断りシステムだったんだ。
じ、じゃあ、初めから犯人の指示には応えられなかったんじゃ……?
もしかして俺、ワナにはかられそうだった!?
「標的はおろか売人からもなかなか買えないのに、電話に出た人はさも当然のごとく『“薬”ヲ、買エ』と命じてきた。……これっておかしくありませんか?」
「犯人には“薬”があるのが当たり前みてぇだ」
博くんの違和感が、柏の一言でさらにふくれ上がる。
ワナじゃなくて、それがふつうで。
“薬”が身近にあるからあんな指示を出せた。
だとしたら……。
全員の脳内にひとつの答えがよぎる。
まさか犯人は――売人?
「電話の声が変わってたのは計画的な犯行だから、か」
薫はすでに確信を持っているようだった。
警察から逃れた標的がいるなら、最初から双雷を襲っているはず。お互いに面が割れてるんだし、そのほうが手っ取り早い。
標的がたまたま夕日ちゃんを見つけてさらったとしたら、声を機械音に変換させるような真似できっこない。
そもそも薬物によって脳が正常に働かないうえに、俺たちにこっぴどく殺られたのに、警察から逃げながらこんなこざかしい計画を立てられるとは考えられない。
「売人が犯人なら、こないだ戦ったのが俺らだってことバレててもおかしくねぇな」
はん、と柏は冷笑する。
あの人の味方だ、と。
標的は繰り返し主張していた。
情報が漏れていてもなんらふしぎじゃない。



