負け犬の傷に、キス




“薬”を買って使えば夕日ちゃんが戻ってくる。

これ以上簡単な方法はない。



でも……本当にそれでいいのか?




それで救われた夕日ちゃんはどう思う?


これまで頑張ってきた博くんとユキの思いは?


俺が“薬”を使ったことでまた街の治安が悪くなったら?




やっぱり、俺は。

できることなら傷つけたくないし、傷つきたくもない。


守れるものは全部守りたいよ。




「……買わない」




簡単なだけだったら、きっと他にも方法はある。




「“薬”から手も引かないし、電話に出たヤツに従う気もない! 俺は、俺のやり方で、夕日ちゃんを助け出す!」




俺にはあんなもの必要ない。


高らかに宣言すれば恐怖がすっと消えた。



大丈夫。俺ならできる。

できる! ……はず!!


“負け犬”を卒業した俺はすごいんだぞ……!!!




「さっすがかっけぇな、双雷の総長さんよ」


「僕たちも協力しますよ」




扉が開く音がした。

現れたのは、私服姿のユキと博くん。




「えっ、えっ! ……なっ、ど、どうし……!?」




びっくりしすぎてろれつが回らない。


柏が自分の携帯を見せびらかしてきた。


あ! 博くんと通話中になってる!

もしかしてさっきからずっと!?




「話聞いて来てくれたの?」


「あ、いえ、元々ここに向かっていたんです」


「え?」


「同盟のこと詳しく決めてなかったこと思い出してな。お前らと話そうと思ってたんだ。……でもちょうどよかったみてぇだな」


「“薬”が関係してるのもありますが、その前に僕たちは同盟関係です。ぜひ協力させてください」