「どうやったら手を引いたって判断してもらえるわけ?」
薫が俺の耳から携帯をはがし、割って入ってきた。
今、俺……責め立てそうだった。
イライラが抑えられなくて。
息づかいばかりが急いでしまう。
ここで責めても夕日ちゃんは救われないのに。
『“薬”ヲ、買エ。ソレヲ使ッタトワカレバ、返シテヤロウ。シカシ、“薬”ヲ消スヨウナ動キヲシタリ、“薬”ヲ飲ムフリヲシタリスレバ、コチラモソレ相応ノ処置ヲ取ル』
「やけに“薬”にこだわんのな。てめぇは何なんだよ」
『……“薬”ヲ買ッタラ、ソノ場デ、使エ。ソウスレバ手ヲ引イタト、ミナシテヤル』
――プツ、ツーツー……。
機械音が切れた。
真っ暗な画面に柏の気に食わなそうな顔が映り込む。
「誰だって聞いてんだろうが……!」
「“薬”を失くした側が、今度は“薬”に溺れろ、ねぇ……。まあそこらへんの雑魚とは違って、一回“薬”を使っても堕ちはしないだろうけど」
けど、の続きを告げず、薫は俺を見据えた。
「どうする?」
「総長……」
「“薬”……買うんすか……?」
下っ端たちにも俺の焦燥が伝わっていた。
不安げな視線。
グッと握りこぶしを作った。



