双雷11代目総長。


その肩書きにまったくなじめなかったころ。




巡回していた繁華街でたまたま出くわした。



俺にケンカを売ってきた一人。

――俺が傷つけすぎた、弱い男。




男は、コンビニ袋をぶらさげた右手をズボンのポッケにつっこみ、ボロいサンダルをぺたぺた鳴らし歩いていた。


頭と足に巻かれた包帯に、嫌でも目がいく。



無事に退院したんだ、という安堵と
あの包帯は俺のせいだ、という罪悪感で

心臓をえぐられた。




男もこちらに気づいた。

真っ青になった顔面がひくひく震えてる。



俺だって怖かった。


この場から逃げ出したかった。




『ご、ごめん……』




口からすべった3文字。

無意識だった。



男は目を見開いた。


恐怖一色だった形相が、みるみるひん曲がっていく。

嘲笑っていた。


鼻を鳴らし、わざと俺の肩にぶつかって通り過ぎていく。




『負け犬が』




すれ違いざま、ボソリとささやかれた。

蔑んだ声だった。


真っ青になっていたのは俺のほうだった。




瞼の裏に朱色がにじむ。



拭っても拭っても消えない。

傷が、癒えない。




残された“痕”を誰が治してくれるの。