負け犬の傷に、キス




「ちょ、ちょっと待ったー!!」




急いで駆け寄り、女子の腕をつかむ手を引きはがした。


女子を俺のうしろに下げて盾になる。



どう考えても無理やりはダメだろ!

ナンパするにしたってもっとやり方考えろ!




「は? こいつ何だよ」

「なに邪魔してくれちゃってんの?」

「空気読めよ」




空気読んだ結果なんですけどねこれが!!


学校帰りの時間帯に全員私服、プラス大人びた容姿から鑑みるに、俺より年上っぽい。大学生か院生あたりかな。

だからか威圧感が凄まじい……!




「こ、この子、いやがってるだろ!」


「緊張してるだけだろ。な?」




にこやかに同意を求められた女子はビクリとおびえ、俺の背中に身を隠した。


この男たちはポジティブすぎないか!?

緊張? 無理ありすぎだよ!




「あ、こいつ、アレじゃね?」

「なに?」

「うわさの“負け犬”」

「あー! こいつが?」

「双雷最弱の総長っていうあの?」




げ。

うそだろ。知られてたの!?


男たちがニヤリとふてぶてしく笑う。



こ、これ……やばいかも。


俺リンチされる?



不意にきゅっ、とカーディガンの裾を引っ張られた。


視線だけうしろに向けると、ツインテールの女子はうつむいて震えていた。


助けたい。
助けなきゃ。


でも今の右足じゃ逃げ切れそうにない。


こうなったら。




「絶対、俺から離れないで」




優しくささやき、裾を握る女子の手をほんの数秒だけ右手で包みこむ。


少しでも恐怖を消してあげたくて。