負け犬の傷に、キス







ああ……どうしてだ。
今日は平和に終えられると思ってたのに。




足首をひねった翌日、放課後。


薫と柏は下っ端数人と協力して、情報収集や双雷への危険排除を目的とした巡回を行うため、今日の帰りは俺ひとり。



今日は日直の仕事もないし、ヤンキーにも追われてないし、真っ直ぐたまり場に向かってた……んだけど。




「ねぇいいじゃん」

「あそぼーよー」


「や、やめてください……!」


「その制服、白薔薇だろ?」

「ベンキョーばっかじゃつまんなくない?」

「俺らと楽しいコトしようぜ」




繁華街を目前にしたコンビニ付近で


ツインテールの女子を、痩せ型な男5人がナンパしてる。



グッバイ、つかの間の平和。

ハロー、ピンチ。




「わ、わたし、帰……」


「え〜? ちょっとくらいいいだろ?」

「ぜってー楽しいからさ」




おいおい。女子いやがってるじゃん。

半泣きなのに距離詰めるとかあの男たち強すぎ。



……って、あれ、あの子……。



じぃっと凝視してみれば、やっぱり。


昨日手当てしてくれた子だ!



こんな偶然ある?




「あっちで遊ぼうぜ」


「い、や……っ」




男が女子の腕をつかみ、強引に繁華街のほうへ連れて行こうとする。